icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学68巻6号

2017年12月発行

文献概要

特集 心臓の発生・再生・創生 Ⅰ.心臓の発生と進化

心臓の起源─心筋分化と区画化形成

著者: 小柴和子1

所属機関: 1東洋大学生命科学部応用生物科学科

ページ範囲:P.509 - P.513

文献購入ページに移動
 心臓とは何か? 最もわかりやすい説明は血液を循環させる“ポンプ”であるというものであろう。機能的相同性から言えば,体液を蠕動運動によって推し進める器官も原始的な“心臓”と捉えることが可能であるかもしれない。近年,マウスやヒトの心臓形成に関する分子生物学的知見は飛躍的に深まり,心臓疾患との関連も明らかになりつつある。そのようななかで,心臓形成に関する分子メカニズムは単に脊椎動物にとどまらず,節足動物や軟体動物の心臓形成においても保存されていることがわかってきた。本稿では,心筋から成る心臓がどのように進化してきたか,また脊椎動物心臓の特徴である複数の区画から成る心臓がどのようにできてきたか,についてみていきたい。

 多くの動物は血液などの体液を循環させるシステムを有しており,系統的にみると,左右相称動物の主要な3つのグループである新口動物,脱皮動物,冠輪動物は何らかのポンプ器官を持つ(図1)1,2)。そのなかで,複数の区画(チャンバー)から成る心臓を有する動物は脊椎動物と軟体動物で,その他の動物は“心臓”と呼ばれるポンプ器官を持ちながら,区画はなく管が拍動しながら体液を移動させている。図1のように系統的に同じグループに属しながらもポンプ器官を有しない動物が存在することを考えると,左右相称動物の共通の祖先は原始的なポンプ器官を有していたが,その後の進化の過程で,一部動物はポンプ器官を失っていったことが推察される。

参考文献

1)Xavier-Neto J, Davidson B, Simoes-Costa MS et al:Evolutionary Origins of Heart. In Rosenthal N, Harvet RP (eds):Heart Development and Regeneration vol. 1, pp3-45. Elsevier, London, 2010
. 11:S46-S66, 2013
3)クヌート・シュミット=ニールセン:動物生理学 環境への適応.沼田英治,中嶋康裕監訳:東京大学出版,東京,2007
. 4:e291, 2006
. 133:1311-1322, 2006
. 375:182-192, 2013
. 131:2533-2541, 2004
. 20:2728-2738, 2006
. 329:565-568, 2010
10)Kardong KV:Vertebrates. Comparative Anatomy, Function, Evolution 4th Edition. McGraw-Hill, New York, 2005
. 136:1761-1770, 2009
. 461:95-98, 2009
. 7:10397, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら