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新奇な体験によって日常の記憶が増強する
著者: 竹内倫徳1
所属機関: 1エジンバラ大学認知神経システムセンター
ページ範囲:P.592 - P.596
文献購入ページに移動 「晩ごはんにどこで何を食べたか」などの,ささいな日常の記憶は“海馬”と呼ばれる脳の領域に形成され,その多くは1日のあいだに忘れられることが知られている。一方で「晩ごはんに行く途中に学生時代に好きだった人に偶然出会った」など新奇で思いがけない出来事を直前あるいは直後に伴う場合,記憶を安定化させるプロセスである“記憶の固定化”が起こり,ささいな日常の記憶が長期にわたり保持される現象が知られている。これまでのラットをモデルとした行動試験により,この新奇な体験による記憶の保持の増強には,海馬における神経修飾物質“ドーパミン”のD1受容体の活性化が必要であることが明らかとなった1)。しかし,脳のどの領域が新奇な体験により海馬にドーパミンを供給し,記憶の保持の増強を担っているかは不明であった。筆者らは,マウスの日常の記憶を調べる行動試験“日常の記憶テスト”の開発を行った2)。そして,海馬にドーパミンを供給する可能性が示唆されている“腹側被蓋野”3)と“青斑核”4)と呼ばれる脳の領域に着目して,新奇な体験による記憶の保持の増強を担う脳の領域の同定を試みた(図1A)5)。
参考文献
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