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特集 社会性と脳
マーモセット共感行動と自閉症マーモセットモデルにおける共感行動障害
著者: 一戸紀孝12
所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター神経研究所微細構造研究部 2理化学研究所脳科学総合研究センター一戸グループ
ページ範囲:P.20 - P.23
文献購入ページに移動“共感”1)という言葉は,一般用語では自己と他者で類似の感情を共有することとして用いられている。しかし,これらの言葉とりわけ“感情”・“共有”は,近年大きく進んだ心理学,認知神経科学において,新しい現象,新しい謎の発見を生み出し,“感情”,“共有”ひいては“共感”全体の定義の広がりと対立,そのメカニズムに迫るような新しい手法の発見が進んでいる。もちろん,学問が進めば更に謎も同時に広がっていく。“共感”も速い速度で広がっている学問領域と言えよう。
デカルトがいみじくも「困難を分割せよ」と言ったように,“共感”も多くの“分割”をする試みが行われている。それと同時に,認知神経科学の発達と共に,これらの分割された“共感”のメカニズムの神経科学の発見との関係が提唱されている。1つの分類は“共感”のスターティングポイントとして,①認知的共感:他者の感情,意図を理解する=相手の感情,意図に引き込まれず他者を行動から理論的に理解する(Theory of Mind;心の理論)。この認知的共感では主体性を保持し,強い感情を惹起されたりせずに適切な行動を選択できる。②情動的共感:相手の感情,意図を理解すると共に,自身の身体的・感情的反応を同時に引き起こす(シミュレーション,ミラーニューロンシステム)。これ以外に,①と②の間に位置する共感も提唱されている。
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