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生体内のタンパク質の発現量はどのような原理で決まっているのか?─プロテオームの拘束条件を探る
著者: 守屋央朗1
所属機関: 1岡山大学異分野融合先端研究コア
ページ範囲:P.83 - P.87
文献購入ページに移動それぞれのタンパク質の発現量は,生体の機能が最も効率よく発揮できるように最適化されていると考えられる。それでは,ある環境での生体にとって最適な発現量を決める背景原理はなんであろうか? 本稿では,モデル真核細胞として最も理解が進んでいる出芽酵母(
タンパク質の発現量を決める原理の一つは,“需要(demand)”であると考えられる。例えば,解糖系の酵素の発現量は,取り込まれたグルコースを最大の速度で代謝しエネルギーを取り出せる量になっていると考えられる。盛んに増殖している細胞では,タンパク質の新規合成が最大になる量のリボソームが発現しているはずである。しかし,これらのタンパク質が需要だけを求めて無限に作られるわけではない。細胞という空間的拘束があり,タンパク質合成に必要なエネルギーやアミノ酸などの材料にも拘束がある。タンパク質の発現量は需要を最大限に満たしつつも,様々な“拘束(constraint)”の下にある。あるタンパク質の発現量は,上記に加え,そのタンパク質の物理化学的性質や生理的機能などの様々な拘束条件が複合的に作用して決まっていると考えられる。
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