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文献詳細

雑誌文献

生体の科学69巻1号

2018年02月発行

文献概要

解説

生体内のタンパク質の発現量はどのような原理で決まっているのか?─プロテオームの拘束条件を探る

著者: 守屋央朗1

所属機関: 1岡山大学異分野融合先端研究コア

ページ範囲:P.83 - P.87

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はじめに─タンパク質の発現量を決める需要と拘束
 それぞれのタンパク質の発現量は,生体の機能が最も効率よく発揮できるように最適化されていると考えられる。それでは,ある環境での生体にとって最適な発現量を決める背景原理はなんであろうか? 本稿では,モデル真核細胞として最も理解が進んでいる出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を題材とし,過剰発現により増殖阻害を引き起こすタンパク質の性質を通じて,特にタンパク質の発現量の拘束条件について考える。
 タンパク質の発現量を決める原理の一つは,“需要(demand)”であると考えられる。例えば,解糖系の酵素の発現量は,取り込まれたグルコースを最大の速度で代謝しエネルギーを取り出せる量になっていると考えられる。盛んに増殖している細胞では,タンパク質の新規合成が最大になる量のリボソームが発現しているはずである。しかし,これらのタンパク質が需要だけを求めて無限に作られるわけではない。細胞という空間的拘束があり,タンパク質合成に必要なエネルギーやアミノ酸などの材料にも拘束がある。タンパク質の発現量は需要を最大限に満たしつつも,様々な“拘束(constraint)”の下にある。あるタンパク質の発現量は,上記に加え,そのタンパク質の物理化学的性質や生理的機能などの様々な拘束条件が複合的に作用して決まっていると考えられる。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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