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文献詳細

雑誌文献

生体の科学69巻2号

2018年04月発行

文献概要

連載講座 生命科学を拓く新しい実験動物モデル−15

軟骨魚類─ヒト心臓発生および先天性心疾患発生機構解明のモデル動物としての可能性

著者: 平崎裕二12 南沢享3 岡部正隆2

所属機関: 1イムス東京葛飾総合病院麻酔科 2東京慈恵会医科大学解剖学講座 3東京慈恵会医科大学細胞生理学講座

ページ範囲:P.182 - P.186

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Ⅰ はじめに ヒトの心臓発生と先天性心疾患
 心臓は主に心筋から成る管腔臓器で,絶えず拍動しながら体内の血液を循環させる役割を持つ。ヒトの心臓は中隔や弁で仕切られた4つの部屋(2心房2心室)を持ち,それぞれが立体的な相互関係を保ちながら特定の位置に配置された極めて複雑な構造を持っている。この理由は,陸上生活を行う脊椎動物の心臓は,1つの臓器で体循環と肺循環という2つの循環(並列循環)を成立させなければならないためである(図1)。酸素需要の高い哺乳類において,体循環を担う左心系と肺循環を担う右心系は血圧と酸素飽和度の点で大きく異なる。大量の酸素を全身に供給するためには体循環と肺循環を完全に隔離し,心臓弁によって血液の逆流を防がなければならない。ヒトの正常な心臓発生の過程を図2に示す。ヒトの心臓は側板中胚葉由来の心臓前駆細胞をはじめ,部位によって起源の異なる様々な細胞群により,原始心筒形成-ループ形成-中隔形成の段階を経て形成される(図2)。
 先天性心疾患(congenital heart disease;CHD)は主に心臓の発生段階において,何らかの原因で心臓の形態が正常に形成されないために心不全や低酸素症,血流障害を引き起こす疾患である。CHDは全出生児の約1%に生じ,多くは乳児期,小児期に発症する。医療の進歩によりCHDは早期診断,早期介入が可能となった。しかし,多くのCHDでは手術が必要で,重篤な疾患では患児の成長に合わせて段階的に複数回行うこともある。心臓手術はそれ自体患者に対する大きな肉体的,精神的負担となり,家族全体の生活の質を低下させる。CHDの原因や発生機序については不明な点が多く,これが効果的な予防法,薬物療法を開発するうえでの障壁となっている。筆者らはヒト心臓の正常発生機構ならびにCHD発生機序を解明する目的で,軟骨魚類の心臓に着目して研究を行っている。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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