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文献詳細

雑誌文献

生体の科学69巻3号

2018年06月発行

文献概要

特集 生体膜のバイオロジー Ⅰ.理論

再構成アプローチから明らかになった生体膜の基本的性質

著者: 鈴木宏明1

所属機関: 1中央大学理工学部精密機械工学科

ページ範囲:P.193 - P.197

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 細胞は,膜という境界があって初めて定義される。Cellという名称は,ばねに関するフックの法則でも有名なRobert Hookeが定めたとされるが,その語源そのものが“小部屋”である。細胞は膜で区切られていることで,中にある生体高分子やその他の分子を高い濃度に保ち,かつ自己を他の細胞と区別できる。昨今の,主に純粋な脂質膜小胞(リポソーム)を使った研究により脂質膜の性質や挙動が次々と明らかにされ,更には原始的な細胞モデル(プロトセルと呼ばれる)がつくられるようになってきた。必要最低限の分子のみを再構成してつくった細胞モデルは,そのシンプルさから初期の細胞の誕生に関する研究とも,またバイオテクノロジー応用に向けた機能を有する人工細胞をつくる研究とも相性がよく1),進展が続いている分野である。
 細胞の起源に関する諸説はさておき,これらの研究で扱われているモデル膜は,多かれ少なかれ現実の細胞が持つ生体膜の特徴を反映しているに違いない。本稿では,昨今の細胞モデル研究と,それを理解するのに必要な理論的背景の基礎を解説する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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