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文献詳細

雑誌文献

生体の科学69巻3号

2018年06月発行

文献概要

特集 生体膜のバイオロジー Ⅱ.構造

ラフト構造を介した細胞膜シグナル伝達

著者: 鈴木健一1

所属機関: 1岐阜大学研究推進・社会連携機構生命の鎖統合研究センター

ページ範囲:P.213 - P.217

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 1980年代後半にKai Simonsらは,trans-Golgi network(TGN)におけるタンパク質や脂質のソーティングの際に,脂質組成が周辺とは異なる膜領域が存在するという仮説を提唱した1)。彼らはその後,Nature誌の有名な総説によって,この概念を大大的に主張し,この膜領域のことを“ラフト”と名付けた2)
 ラフトは,ソーティングにおける役割に加えて,細胞の増殖や接着,免疫など,非常に広範囲にわたる生命現象において,細胞の形質膜上のシグナル伝達のプラットフォームとして働いていると考えられてきた。当初想定されていたラフト構造(図1)は,膜外層にスフィンゴミエリン,スフィンゴ糖脂質,コレステロール,GPI(glycosylphosphatidylinositol)アンカー型受容体(GPI-AR)などが,内層にSrc fmily kinase(SFK),Gタンパク質など,飽和脂肪酸修飾を受けたシグナル分子が濃縮されている,というものであった。すなわち,「形質膜上には,脂質の相分離によって常にミクロンサイズの大きくて安定なラフトが存在している。このようなラフトに局在している受容体にリガンドが結合すると,ラフトにシグナル分子もあらかじめ集められているため,効率よくシグナル伝達が起こる」というものであった。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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