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文献詳細

雑誌文献

生体の科学69巻3号

2018年06月発行

文献概要

特集 生体膜のバイオロジー Ⅳ.機能

細胞膜にかかる張力と胚発生

著者: 道上達男1

所属機関: 1東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系

ページ範囲:P.242 - P.246

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 初期発生において,受精卵は様々なタンパク質の局在とそれに応答するシグナル伝達,そして遺伝子発現の差によって,どちらが頭でどちらが尾の方向か,あるいはどこが中胚葉でどこが外胚葉かという基本的な胚パターンが決められる。その後,胚は個々の細胞を協調的に移動させることで組織全体を大きく変形させ,複雑な構造の個体を構築する。細胞が移動するには,自らの力で動くにせよ,周囲の影響を受けて移動するにせよ,根拠となる力の発生が必須であり,その結果として細胞自体には力がかかる。細胞にかかる張力は,単に発生する力の強弱だけに依存するのではなく,細胞の物質的な特徴,例えば細胞膜付近の細胞骨格の密度や,細胞膜と相互作用する様々なタンパク質の有無や動態変化によっても変化すると考えられる。
 以上の観点から,胚の形態形成運動は,単純な個々の細胞の動きだけでなく,細胞の種類ごとの物理的な違い(細胞膜の硬さ,細胞質基質の弾性など)と,それに応じた細胞膜の張力変化がどのように起こるかも議論されるべきである。本稿では,細胞膜にかかる張力を生みだす接着装置の構造と細胞にかかる力の計測法についてごく簡単に概説したのち,筆者らが近年行っている,胚の細胞にかかる張力の非侵襲的計測に関する知見を紹介する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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