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文献詳細

雑誌文献

生体の科学69巻3号

2018年06月発行

文献概要

特集 生体膜のバイオロジー Ⅴ.新技術

EMARS法の開発と膜マイクロドメイン研究への応用

著者: 本家孝一12 山口亜利沙1 小谷典弘3

所属機関: 1高知大学医学部生化学講座 2高知大学医学部附属先端医療学推進センター 3埼玉医科大学医学部生化学講座

ページ範囲:P.258 - P.262

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 細胞膜は均一な脂質二重膜ではなく,局所的に特定分子が会合した秩序構造を形成しており,この部位を膜マイクロドメインと総称する。膜マイクロドメインは,特定の機能分子がミリ秒単位で集合と離散を繰り返すダイナミックな構造で,シグナル伝達や細胞内タンパク質輸送など重要な生物現象のプラットフォームとして機能している。例えば,細胞増殖因子受容体のまわりには,シグナル伝達やエンドサイトーシスにかかわる分子群が集まり,一時的に機能クラスターを形成する。平静時の膜マイクロドメインの大きさは数10nm以下(数個〜数十個のタンパク質分子を含む)と小さいが,いったん刺激が入ると数百nm〜1μmと大きな分子アッセンブリーをつくることが知られている1)
 膜マイクロドメイン(脂質ラフトとも呼ばれる)の調製には,低温下で中性界面活性剤を用いて,細胞膜をホモジェナイズしてショ糖密度勾配超遠心にかけたときに浮遊してくる低密度画分detergent resistant membrane(DRM)を回収する方法2)がよく使われる。DRMには細胞膜外層に存在するスフィンゴ糖脂質,コレステロール,GPIアンカータンパク質に加えて,細胞膜内層に存在するsrcファミリーキナーゼやGタンパク質などのシグナル分子が濃縮され,膜マイクロドメインが単離されたかのようにみえるが,DRMは界面活性剤によるアーティファクトだという指摘がある3)。また,不均一で多様な膜マイクロドメインを一括して集めているため,DRMに回収される分子群が同一の機能クラスターのなかに会合していると思い込んではならない。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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