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文献詳細

雑誌文献

生体の科学69巻4号

2018年08月発行

文献概要

特集 いかに創薬を進めるか

創薬をとりまく環境の変化について

著者: 江崎禎英12

所属機関: 1経済産業省商務・サービスグループ 2内閣官房健康・医療戦略室

ページ範囲:P.302 - P.304

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 長きにわたって人類を苦しめてきた主たる疾患は感染症である。国内でも戦前から戦後にかけて死に至る病の筆頭は結核であった。感染症は外から侵入した異物(細菌やウイルスなどの病原体微生物)によって引き起こされるため,原因となる異物を特定し,これを排除できれば病気は根治できる。感染症の薬は極めて効果が高く,治療満足度も高い。事実,わが国における結核による死亡者数は,新薬の開発・普及によって劇的に減少している。
 他方,近年われわれが恐れる病気は,がん,糖尿病,認知症などである。健康な人でも自分には関係ないとは言えないものばかりであろう。しかし,これらの疾患に対する薬の効果は,感染症の薬に比べると大きく見劣りしている。しかも,新薬の開発コストは急速に増加する一方で,その効果は既存薬を多少上回る程度でしかない。認知症に至っては,多くの製薬会社が新薬の開発を断念しつつある。何故このようなことになるのであろうか。その理由を探るため,主な疾患をその原因や性質に従って分類すると興味深い事実が浮かんでくる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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