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文献詳細

雑誌文献

生体の科学69巻4号

2018年08月発行

文献概要

特集 いかに創薬を進めるか

タンパク質相互作用の創薬─物理化学を介して

著者: 長門石曉12 津本浩平123

所属機関: 1東京大学医科学研究所 2東京大学大学院工学系研究科 3東京大学創薬機構

ページ範囲:P.349 - P.353

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Ⅰ.チャレンジングな標的:タンパク質-タンパク質間相互作用
 低分子創薬において,タンパク質-タンパク質間相互作用(protein-protein interaction;PPI)に対する低分子阻害剤の設計は最もチャレンジングなテーマの一つである。PPI界面の面積に対して,低分子薬剤の分子サイズでは阻害面を十分にはカバーできないため,効果的な低分子設計が困難であるとされている。そのため,現実としてPPI阻害剤の多くは抗体医薬品である。低分子阻害剤は臨床試験で苦戦しているのが現状である1)。しかしながら,PPIに対する低分子薬剤のニーズは高い。抗体は細胞外においては威力を発揮するものの,分子サイズが大きいことから膜透過性が低く,結果として細胞内を標的にすることが困難という欠点がある。細胞内には様々な疾患関連で標的となり得るPPIが存在することから,低い抗原性と高い透過性の低分子化合物によるPPI阻害剤設計に大きな期待が寄せられている。
 低分子化合物がPPI阻害剤としての役割を果たすためには,そのPPI界面に対して低分子が特異的に結合しなければならないであろう。更に,PPI界面は比較的フラットで,酵素と基質のような明瞭な凹凸がないことも多い1,2)。そのなかで,PPI界面が“比較的小さく,かつ明瞭な二次構造を有するタイプ”については,近年,阻害剤開発技術が急速に発展している(図1)3)。α-helixを模倣した主鎖と官能基の立体配置のデザインによるPPI阻害剤設計が,現在のところ主要なコンセプトとなりつつある(図1)。しかし,PPI界面は“明瞭な二次構造を有するタイプ”のみではないことは自明である。“相互作用界面の広いタイプ”や“明瞭な二次構造がない界面タイプ”の低分子阻害剤開発に,大きなブレイクスルーを出すことが求められている(図1)。このように,標的PPIに対して薬剤を合理的に設計するアプローチはなく,手探りであるのが現状である。そのため,PPI阻害剤探索のための化合物ライブラリーについても議論が続いているが,明確なコンセプトはない。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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