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特集 いかに創薬を進めるか
悪性腫瘍モデルゼブラフィッシュを利用した創薬研究
著者: 島田康人123
所属機関: 1三重大学大学院医学系研究科統合薬理学分野 2三重大学次世代創薬・ゼブラフィッシュスクリーニングセンター 3三重大学生命科学研究支援センターバイオインフォマティクス部門
ページ範囲:P.365 - P.370
文献購入ページに移動製薬会社は現在,新規医薬品の開発効率に大きな問題を抱えている。これまで最も有効であった,そしてこれからもある程度は有効であろう創薬戦略では,まず治療標的分子(タンパク質など)を決定し,それに作用する化合物を大規模スクリーニングで探索する。そしてヒットした化合物を齧歯類動物を主とした疾患モデル動物を用いた実験で評価し,ヒト試験(臨床試験)に入っていく。この過程で約3,750分の1の確率で基礎研究から抽出された化合物達は,動物を用いた前臨床試験においてADMEや生体内活性不足で更にその3分の2が脱落する(てきすとぶっく製薬産業2014-2015,日本製薬工業協会)。ヒト臨床試験に入ってからは,例えば抗腫瘍薬領域では70%以上の化合物がフェーズ2で脱落し,更に残った60%がフェーズ3で消えていく1)。この非常に低い創薬成功率を改善するため,スクリーニング試験に動物モデルを導入し,試験化合物の疾患・組織選択性や毒性のみならず,その生体内利用率などを創薬の初期段階で評価しようという試み「ホールアニマルスクリーニング」が始まっている。このホールアニマルスクリーニングの対象動物としては,マウスなどの哺乳類動物ではコスト・動物愛護の点から実現性が低く,ハエや線虫などではヒトと共通する臓器が少ないという問題(例えばハエにはヒトと類似した血管組織がない)から,小型魚類ゼブラフィッシュが注目されている。
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