特集 細胞高次機能をつかさどるオルガネラコミュニケーション
Ⅰ.小胞体
小胞体連携ゾーンを介した脂質輸送機構
著者:
水池彩1
花田賢太郎1
所属機関:
1国立感染症研究所細胞化学部
ページ範囲:P.541 - P.545
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小胞体は分泌経路の起点としてタンパク質の合成・品質管理に関与するほか,カルシウムイオン(Ca2+)の貯蔵や,脂質を含む様々な物質の代謝の場となるなど多種多様な機能を有するオルガネラである。小胞体,ゴルジ体,細胞膜,エンドソーム,リソソームは小胞輸送を介したネットワークを形成しているが,小胞体と輸送小胞を直接やりとりするのはゴルジ体のみである。一方で,小胞体には様々なオルガネラと非常に近接した部位が存在することが電子顕微鏡観察により判明した。膜間距離が約10-30nmまで近接したゾーンは膜接触部位(membrane contact site;MCS)と呼ばれ,多様なオルガネラ間で観察されている。小胞体はMCSを介してほぼ全種のオルガネラや細胞膜と連携していると考えられつつある(図1)。現在までに,MCSにおけるオルガネラ間物質輸送やシグナル伝達を示唆する結果が多く報告されている。本稿では,そのなかから小胞体と他のオルガネラ間のMCSを介した脂質輸送について概説する。ミトコンドリアとの間の脂質輸送は田村らの稿(577頁)を参照されたい。