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文献詳細

雑誌文献

生体の科学7巻1号

1955年08月発行

文献概要

論述

血色素量に関する二,三の考察

著者: 鴫谷亮一1

所属機関: 1国立東京第一病院

ページ範囲:P.33 - P.38

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 Ⅰ.はじめに
 血色素は蛋白質としては比較的容易に結晶を作るものの一つである。従つて1840年にHünefeld1)が偶然に血色素結晶を得て以来今日に至る迄,極めて多数の結晶作成法が発表されている。又その精製法に就ても幾多の優れた方法が次々と報告されている2)。然るに今日に至る迄その正確な分子量は国際的に統一決定されていない。古くHüfner3)が鉄1原子が血色素1分子と結合するものであるとして以来20世紀初め1/4時代にはこの学説が完全に支持された。しかも血色素の鉄含有量としてHüfnerの与えた値0.334%は今日に至る迄殆んどその値を改訂する必要に迫られなかつた程正確なものであつた事は驚嘆に値する。然しHüfnerのこの数字によれば血色素の分子量は16718(55.84/0.334×100=16718 但し55.88は鉄の原子量)となるがHüfnerはその分子量を滲透圧法によつてきめているが,その後の研究者の測定値は常にその約4倍の値となつている。従つて何故にHüfnerが鉄1原子が血色素1分子に結合するとなしたかに疑問がもたれる。今日では血色素は4分子の集合体であると考えられている故この事実に不思議はないが,Hüfnerが何故1/4分子量を採用したかは不明である。処で先に述べた血色素の鉄含有量に就ては1936年にHeilmeyer4)等が0.334%という数字を再確認支持した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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