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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学7巻4号

1956年02月発行

雑誌目次

口絵

T.P.Feng博士(馮徳培)の紹介

ページ範囲:P.173 - P.174

 1955年もおし迫つた年の暮近く,郭沫若(Kuo Mo jo)氏を中心とする学術視察団が我が国に訪れたことは,今尚われわれの記憶に新らしい。
 その一行の中にDr.T.P.Fengの名前があげられていたことはいたく日本の生理学者の興味を惹いた。博士は恐らく20代の若い時代にイギリスに渡つたと思われる人である。A.V.Hillがその活動のピークにあつた時代に,東大の福田教授と共に博士はHillの指導を受けた。伝え聞く所によるとFeng博士はその後長く英国にとどまり,やがて米国に渡つたという。その頃から彼の名前が注目を惹くようになつたように思われる。

巻頭言

巻頭言

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.175 - P.175

 わたくしは臨床医である。したがつて基礎医学に対しては,それに直接携わる研究者とは,少しちがつた角度からの希望がある。
 わが国でも基礎医学においては,独創的なすぐれた業績がつぎつぎとあらわれ,日本の医学を世界的に推進させていると話してくれた人がある。なるほどそれらの仕事の解説をきくと,りつぱなもののような気もする。しかしそれはしよせん,おいしそうな御馳走を望遠鏡でのぞかせられたようなもので,わたくし自身の身にはならないのである。そんなに極上でなくてもよいから,実際にほおばれるもののほしいというのが,臨床家の真情である。ところが,事実はあまりに遠方に並べられた美味ばかりで,食用としては役にたたず,鑑賞用にしかならないものが大部分である。

綜説

LE PROBLÈME DE L'HÉTÉROGÉNEITÉ STRUCTURALE ET FONCTIONNELLE DU MUSCLE STRIÉ

著者: ,   André BOURGUIGNON

ページ範囲:P.176 - P.192

 横紋筋に機能的にも解剖学的にも二つの要素のあることは,既にRanvier(1873)以来示摘されていることであり,その後もこれに関する研究が陸続と現れていることは,この間題の重要性を示すものである。
 赤筋と白筋の問題も古くから論じられてきているが,その機能に関しては統一的見解は打ち出されていない。物の種の相違によつて両筋の機能は異つてくることが動られている。また同一筋線維の中においても例えばA帯,I帯の顕微鏡的区別が云々され,これが機能とむすびついて論じられている。

論述

生物発生異論

著者: 守山英雄

ページ範囲:P.193 - P.199

 はしがき
 ネズミがゴミから発生したり,山いもからウナギが出来たり,スズメがハマグリに化けたりするというような途方もないことを本気で問題にする人は今ではないにちがいない。目に見えない細菌のような微生物にも自然発生が不可能であることは有名なPasteurの実験以来誰も疑う人はなくなつている。しかし細菌よりも更に小さいVirusとなると,自然発生が可能かもしれぬと考えている人はかなり多いようでもある。Virusが果して生物であるかどうかという点になると何ともいえないから,若しVirusが微生物ならば自然発生があつても不思議ではない。
 ところが,生物であることにはまちがいのない細菌や原虫などが一見自然に発生するのではないかと思われる現象がかなり多い。その現象とはどんなものであるか,またどうしてそんな現象が起るかについて論じて見たい。

座談会

オバーリンとその学説をめぐつて

著者: 守山英雄 ,   岡本彰祐 ,   鎮目恭夫 ,   熊谷 ,   ,   内薗 ,   関根 ,   中尾 ,   石渡 ,   江橋

ページ範囲:P.200 - P.210

 オパーリンの印象
 岡本 オパーリン教授の来朝を機に,「生命の起源」の問題をめぐつて,いろいろ広くお話を伺いたいと思います。まず,オパーリンの講演に対してどんな印象を持たれたかというところから始めましようか。
 守山 私は聞かないですよ。

報告

直接結合増幅器(Ⅱ)

著者: 伊藤正男

ページ範囲:P.211 - P.217

 3.B電源の設計
 前回には直結増幅器の不安定な理由及びそれに対して増幅回路に行われている居る色々の対策について述べたのであるが,電源自身の安定度を高めるために行われて来た種々の工夫改良も極めて重要で,直結増幅器の製作にあたつては電源に対しても,増幅回路に対すると同様の注意を払わねばならない。前に引用した直結増幅器の設計者達は何れも電源回路を合せ発表して居る。
 B電源に要求される安定度については先に第3図の回路に対しては10−3程度であると述べたが,増幅回路の利得が増すにつれて10−4乃至10−5の安定度が要求され,しかも出来るだけ交流化する事が必要である。交流化された整流電源の種々の型についてはF. V. Hunt & R. W. Hickman(1939)12)の考察があり,又最近J. J. Gilvarry & D. F. Rutland(1951)7)の理論が発表されて居り,実際の回路についても種々の発表があるが,第7図は筆者の製作した電源の回路図で,プラス側は所謂反再生型(degenerative type)により,マイナス側は定電圧放電管によつて安定化して居る。反再生型の方は2A3を負荷と直列に入れ,出力電圧変動を2A3の格子に負遺還して居り,この遺還回路は二段増幅になつて居る。図中のR9は出力電圧の調整のための,又12は交流電圧の変動に対する補償用のボリユームである。

肝灌流液に現れる蛋白成分に関する研究

著者: 高橋勝三

ページ範囲:P.217 - P.218

 血清蛋白の中でもAlb.及びFibrinogenが肝臓で作られる事は今日汎く知られているが,著者は血清蛋白形成に参与する肝の役割を明かにする目的で肝をin situにおいたまゝ,血流より遮断し,加温酸素加Tyrode氏液にて灌流し肝静脈に現れてくる灌流液の蛋白成分を濾紙電気泳動法を用いて検索し,更に肝組織蛋白質と比較して興味ある所見を得たので概略報告する。

通信

日本の生理学の向上のために(日本生理学会あての通信)

著者: 田崎一二

ページ範囲:P.219 - P.223

 1.この通信の目的
 私がこの通信のなかで述べようとしていることは,まず今の日本の生理学の水準が世界的に見て甚だ低いこと,つぎに日本生理学会がこの低い水準を向上させる義務をもつていることとを,すなおに認めていただける人達にだけ明瞭な意味をもつている。日本におけるおびただしい学位論文の数と数百にものぼるであろう生理学教授の数を海外にたいして誇らしく思う者がかりにあつたとしても,私は之に反対する"臨床的な手腕"をもち合わせては居ない。また他人にやらせておいて後で我がもの顔に発表する連中の仕事の低さなども,いまさら議論してみる元気もない。この低い日本の生理学の水準は最近,向上どころか,かえつて低下の途をたどつているようにすら私には見える。
 べつに細い数字などによらなくとも,イギリスとアメリカが世界最高の生理学の水準を維持していることを,大多数の人々は認めるであろう。内容的にみればアメリカの水準は国外から輸入した学者の力で保たれている部分もあり学者の平均の力量もイギリスのそれに比して高くはないのであるが,アメリカは,イギリスと違つて,中枢神経から音の感覚生理に至るまで欠けることなく良い水準をもつていることも否めないであろう。次にスエーデン,ドイツ,フランス,スイスあたりの国々がつゞき,更にそのつぎにデンマーク,ベルギー,オランダ,カナダ,オーストラリヤなどが位しているように私には思われる。

研究室から

新潟だより—新潟大学医学部薬理学教室

著者: 松田勝一

ページ範囲:P.223 - P.224

 新潟は東京から急行にのつて6時間の距離である。清水トンネルは丁度その半分のところにある。富山県へ越えるにも7時間ほどかかる。兎に角大きな県で,それが可なり長く日本海に臨んでいる特殊性がある。新潟大学の敷地は海に近い砂丘であるから,冬になつて海が荒れて来ると遠く浪音が聞えて来る。
 新潟医大藥理学教室の最初の担任者は,真崎健夫氏(現北大)である。氏は化学実験に興味をもち当時多数の化学器械を購入したので,これは今でも大いに役立つている。木原玉汝氏がそのあとをついだが終戦の翌年不幸病に斃れ,昭和22年医学部となつて私がこの地に赴任した。赴任当初の助教授福原武氏は岡山で生理学を担任している。同じく教室にいた横山正松氏は福島大の生理,角田幸吉氏は弘前大の藥理の現教授としてそれぞれ活躍している。信大藥理助教授大鳥居健君も本教室出身である。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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