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巻頭言
巻頭言
著者: 吉川春寿1
所属機関: 1東大
ページ範囲:P.225 - P.225
文献購入ページに移動 本誌前号の巻頭言に高橋吉定教授が,現在の日本の基礎医学と臨床医学との間に深い断層があつて,臨床の方で欲しいと思う基礎的研究については基礎医学者は一向興味をもつてくれない,という意味のことをのべて居られた。基礎医学者の業績はなるほどりつぱなものであるかも知れないが,それは臨床医にとつてはしよせんおいしそうな菓子を望遠鏡で覗くようなもので,自分でほおばれる菓子ではないのだ,というのである。これはたしかに言われる通りで,わたくし自身,基礎の側から何とかしてこの深い溝をいくらかでも浅くしたいと考えている。しかし,なかなかこれはむずかしい。では,何故にむずかしいのだろうか。
わが国でも独創的な基礎医学の研究が行われ,あるものは世界的なレベルまで達していることはみとめてよいと思う。けれども,これが極上の菓子で臨床家には手のとどかないものだという比喩はあてはまらない。むしろこれは,将来臨床家がほおばつて味える様な菓子をつくる原料なのだといつた方がよさそうである。つまり,ほおばれないのは上等すぎて手がとどかないのではなく,ほおばれるだけの形態をまだとつてないのである。
わが国でも独創的な基礎医学の研究が行われ,あるものは世界的なレベルまで達していることはみとめてよいと思う。けれども,これが極上の菓子で臨床家には手のとどかないものだという比喩はあてはまらない。むしろこれは,将来臨床家がほおばつて味える様な菓子をつくる原料なのだといつた方がよさそうである。つまり,ほおばれないのは上等すぎて手がとどかないのではなく,ほおばれるだけの形態をまだとつてないのである。
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