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文献詳細

雑誌文献

生体の科学7巻5号

1956年04月発行

文献概要

報告

変形体の收縮性蛋白質

著者: 中島宏通1

所属機関: 1大阪大学理学部生物学教室

ページ範囲:P.256 - P.259

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 原形質流動の機構を考える際に重要な問題となるのは原形質系のmechanochemical systemである。神谷,中島,阿部1)は変形菌(Myxomycete)の変形体(Plasmodium)に見られる原形質流動の原動力と物質代謝との関係を研究し,原形質流動は主として醗酵によつて生産されるエネルギーが利用されることを指摘した。すなわち原形質流動の原動力は醗酵のエネルギーがアデノシン三燐酸(ATP)を介して蛋白質の分子変形に変換される結果生ずるものと考えられる。そこでATPによつて分子変形を起す蛋白質の性格が問題となる。
 Goldacre及びLorch2)は運動しているアメーバの尾部にATPを注射すると前進方向の運動が促進され,逆に頭部に注射すると逆方向の運動が引き起されるのを観察し,このような現象をactomyosin-gelに及ぼすATPの影響と考えている。神谷,中島,阿部1)は複室法を用いて変形体にATPを作用させた結果流動力が非常に増大することを明かにした。一方Loewy3)は変形体を1.2MKCl,0.1M K2HPO4で60分間,0°〜4℃で抽出し,この抽出液にATPを添加した結果見られる粘度変化から,変形体中にもactomyosin類似の收縮性蛋白質が存在すると考えている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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