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文献詳細

雑誌文献

生体の科学70巻1号

2019年02月発行

文献概要

特集 脳神経回路のダイナミクスから探る脳の発達・疾患・老化

大脳皮質一次視覚野の機能発達における視覚経験の役割

著者: 吉村由美子12

所属機関: 1自然科学研究機構生理学研究所視覚情報処理研究部門 2総合研究大学院大学生命科学研究科

ページ範囲:P.28 - P.32

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 大脳皮質視覚野が関与する視覚機能の多くは,生後の視覚体験の影響を受けて発達する。生後発達期に視覚体験を欠くと,視覚能力が低下することがヒトを含む多くの哺乳類において報告されている。例えば,発達期にラットの両眼の瞼を縫合し視覚体験を経ないまま成熟すると,視力が著しく低下する1)。ヒトにおいては,先天性白内障により生後しばらくの期間,形態視が遮断されると,手術により白内障が改善しても視力は低下している。しかしながら,発達期の間であれば,その後に視覚体験をすると正常な視力レベルに回復する2)。これらのことは,視覚機能の発達には視覚体験が重要であることを示している。
 発達期の視覚体験が大脳皮質一次視覚野の視覚反応や神経回路構築にどのような影響を与えるかについて,これまでにネコやラット・マウスなどを対象に精力的に研究されている。本稿では,筆者らの研究を中心に,視覚反応の発達や神経回路の構築に生後の視覚体験が果たす役割について紹介する。また,一次視覚野の可塑性機構は眼優位可塑性をモデルに解析が進められている。眼優位可塑性やその感受性期については,誌面の都合上,本稿では取り上げない。他の優れた総説を参照していただきたい3)

参考文献

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. 532:370-374, 2016
. 34:12576-12586, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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