特集 免疫系を介したシステム連関:恒常性の維持と破綻
Ⅴ.免疫と代謝
慢性炎症と肥満・メタボリックシンドローム
著者:
宮澤崇1
小川佳宏1
所属機関:
1九州大学大学院医学研究院病態制御内科学
ページ範囲:P.135 - P.140
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内臓脂肪蓄積を背景として糖・脂質代謝異常,血圧上昇,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease;NAFLD)などが重複して進展し,動脈硬化症を中心として糖尿病,高血圧症,非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis;NASH)などの生活習慣病を発症する疾患概念であるメタボリックシンドロームに共通する基盤病態として,慢性炎症が注目されている。炎症は内外の様々なストレスに対する生体防御反応であるが,臓器局所の恒常性維持機構と考えられる軽度の炎症(生理的炎症)が何らかの理由で可逆的な定常状態を逸脱して慢性化し,不可逆な臓器の機能不全(病的炎症)に至ってしまう。ストレスにより傷害された実質細胞はマクロファージなどの貪食細胞により速やかに除去されて臓器局所の恒常性が維持されるが,この細胞間相互作用による適応の破綻により炎症が慢性化し,病態が進展する。
本稿では,肥満の脂肪組織およびメタボリックシンドロームの肝臓における表現型であるNASHでみられる慢性炎症と,臓器局所での細胞間相互作用の結果生じるユニークな病理組織像について,最近の知見を交えて概説する。