特集 免疫系を介したシステム連関:恒常性の維持と破綻
Ⅴ.免疫と代謝
IgMによる血中タンパク質AIMの活性制御と疾患とのかかわり
著者:
新井郷子1
宮崎徹1
所属機関:
1東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター分子病態医科学部門
ページ範囲:P.148 - P.154
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Apoptosis inhibitor of macrophage(AIM,遺伝子名CD5L)は,体内を循環する血中タンパク質であり,これまでに,肥満や脂肪肝の抑制機能や,近年では,急性腎障害や真菌性腹膜炎などの組織障害を伴う疾患の治癒を促進することが見いだされている。血中でAIMはそのほとんどが免疫グロブリンM(immunoglobulin M;IgM)に結合して安定化しており,AIMの体内量や活性の調節はIgMによるところが大きい。健常時はIgMに結合しているAIMは,特定の疾患時にIgMから解離することで可動性が増すと共に,活性状態が最大化される。すなわち,IgMは抗体としての役割だけでなく,AIMのキャリアとしての重要な任務を果たしているといえる。しかしながら,AIMがどのような結合様式でIgMと複合体を形成し,そして如何なるメカニズムで解離が誘導されるのか,その調節機構については未知であった。今回筆者らは,AIMとIgMの結合について,両者の複合体を電子顕微鏡で解析し,構造を視覚的に明らかにすることに成功した。この発見は,AIMとIgMの複合体形成の機序だけでなく,IgMの構造そのものに関しても免疫学の教科書を書き換えるほどの発見をもたらした。本稿では,AIMのIgMとの結合・解離に関する新しい知見をベースに,これまでに蓄積された,疾患におけるAIMの機能や,治療・診断応用における可能性を紹介する。