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文献詳細

雑誌文献

生体の科学71巻1号

2020年02月発行

文献概要

特集 睡眠の制御と機能

ショウジョウバエを用いた睡眠研究の最前線—順遺伝学的行動スクリーニングから同定した新規睡眠誘引遺伝子「nemuri

著者: 戸田浩史1

所属機関: 1筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構

ページ範囲:P.31 - P.35

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Ⅰ.睡眠の謎:なぜ眠るのか?眠るメカニズムは?
 神経系を保持するすべての動物は眠ると考えられている。例えば,われわれヒトは一生の三分の一を眠って過ごすが,そもそも,なぜ動物は眠るのであろうか。様々な動物種が地球上には存在するが,睡眠をしない動物というのが進化の過程で誕生しても,おかしくなかったように思える。もしそんな種がいたらと仮定しよう。おそらくその種は他の動物が眠っている間,せっせと生産的な活動に勤しむことで繁栄を極め,地球上を覆い尽くしてしまったのではなかろうか。確かに,眠っている間は外敵からの捕食の危険性も増すうえ,何ら生産的な活動をしているようには思えない。眠らないほうが種の維持には一見,有利にみえる。しかし,現実には睡眠をしない動物が種の繁栄に有利に働いた,などという選択圧はかからなかったのである。それどころか,夜間に固定して長時間睡眠をとっているヒトが種の頂点に立っている,というのが現実である。これはいったいどういうことであろうか。まさにここに睡眠の深遠な謎が存在するのである。悠久の進化の過程で,睡眠という,気を失ってまで行わなければいけなかった個体に果たす,何らかのとても大切な機能があるはずである。
 では,睡眠の機能とはいったい何なのか。現代の生物学は,この問いに答えを見いだせていない。しかし,“どのように”睡眠が制御されているのかという問いには,神経科学,遺伝学,生化学などの様々な技術を多用することで迫れるはずである。では,睡眠の制御メカニズムはどれほどわかっているかというと,これまた睡眠の機能と同様,実はあまりよくわかっていないというのが現状である。

参考文献

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. 14:e1007440, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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