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特集 睡眠の制御と機能
視床と睡眠・覚醒・意識
著者: 本城咲季子1
所属機関: 1筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構
ページ範囲:P.45 - P.49
文献購入ページに移動 睡眠・覚醒サイクルを通じ,われわれの意識レベルは大きく変動する。覚醒時,われわれは意識を持ち,外界を認識する。哺乳類の2種類の睡眠のうち,レム睡眠時には夢が経験されるが,ノンレム睡眠時には意識が失われ,どちらの睡眠時にも外部感覚情報は認識されない。このようなダイナミックな意識レベルの変化は,どのような神経活動の変化によってもたらされるのであろうか?
個体の睡眠・覚醒状態は脳波によって判定することができる(図1)。覚醒時の脳波は“活性型脳波”と呼ばれ,振幅が小さく,周波数が速い(図1左上)。それに対し,ノンレム睡眠時には脳波の振幅が大きくなり,0.5-4Hzのゆっくりとした波(徐派,あるいはslow wave)が顕著になる(図1右上)。このような脳波の変化は,高次認知機能を担うと考えられる大脳皮質神経細胞の活動変化によって起こる。覚醒時,皮質神経細胞は持続的に脱分極し,発火のタイミングの自由度が高い。一方,ノンレム睡眠時,皮質神経細胞の膜電位はゆっくりとした振動を示す。数百ミリ秒ごとに発火を伴う脱分極期(up state)と発火が停止する過分極期(down state)を繰り返す。この膜電位の振動が皮質神経細胞間で同調しているために,足し合わさって脳波の振幅が大きくなり,slow waveとして観察される。多くの神経が同調して発火を停止する静止期はoff periodとも呼ばれ,このoff periodにより神経細胞間の情報の伝達が阻害されることが,意識の喪失や外界の情報を認識しなくなる基盤ではないかと考えられている。
個体の睡眠・覚醒状態は脳波によって判定することができる(図1)。覚醒時の脳波は“活性型脳波”と呼ばれ,振幅が小さく,周波数が速い(図1左上)。それに対し,ノンレム睡眠時には脳波の振幅が大きくなり,0.5-4Hzのゆっくりとした波(徐派,あるいはslow wave)が顕著になる(図1右上)。このような脳波の変化は,高次認知機能を担うと考えられる大脳皮質神経細胞の活動変化によって起こる。覚醒時,皮質神経細胞は持続的に脱分極し,発火のタイミングの自由度が高い。一方,ノンレム睡眠時,皮質神経細胞の膜電位はゆっくりとした振動を示す。数百ミリ秒ごとに発火を伴う脱分極期(up state)と発火が停止する過分極期(down state)を繰り返す。この膜電位の振動が皮質神経細胞間で同調しているために,足し合わさって脳波の振幅が大きくなり,slow waveとして観察される。多くの神経が同調して発火を停止する静止期はoff periodとも呼ばれ,このoff periodにより神経細胞間の情報の伝達が阻害されることが,意識の喪失や外界の情報を認識しなくなる基盤ではないかと考えられている。
参考文献
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