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文献詳細

雑誌文献

生体の科学71巻1号

2020年02月発行

文献概要

特集 睡眠の制御と機能

疲労・慢性疲労と睡眠

著者: 渡辺恭良123

所属機関: 1理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム 2理化学研究所生命機能科学研究センター 3日本疲労学会

ページ範囲:P.63 - P.67

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 一般社団法人日本疲労学会では,「疲労は,通常のパフォーマンスを発揮できなくなる状態」と定義して,客観的に定量計測している。もちろん,疲労・倦怠感の主観的部分も非常に重要で,客観的・主観的疲労の計測が大体できてきたことが筆者らの研究成果でもある。そのような疲労の客観的・主観的尺度を用いると,定量的な計測値を得ることができるため,疲労・慢性疲労の分子・神経メカニズムに関する研究も統合的に推進できてきた。われわれのオーバーワークによって,活動担当細胞内やその周辺で,生体酸化,炎症,修復エネルギーの低下により,様々な継続時間を表出する疲労(機能低下)が起こることがわかった。疲労時の神経系では,脳内の酸化現象,脳内炎症,エネルギーの低下も明らかになり,セロトニンなどの神経伝達機構の機能低下も判明した。このメカニズム解明研究を通して,睡眠の問題,特に睡眠の質の低下からの疲労・慢性疲労のメカニズムを探ることにより,疲労・慢性疲労への対処法,“抗疲労”方策・製品の開発に資することができる。

参考文献

1)大村 裕,渡辺恭良:ブレインサイエンス・シリーズ25 脳と疲労—慢性疲労とそのメカニズム,共立出版,東京,2009
2)渡辺恭良編:最新・疲労の科学—日本発:抗疲労・抗過労への提言,別冊『医学のあゆみ』,医歯薬出版,東京,2010
3)Watanabe Y, Evengard B, Natelson BH et al(eds.):Fatigue Science for Human Health, Springer, Tokyo, 2008
4)Watanabe Y, Kajimoto O, Kuratsune H:Biochemical indices of fatigue for anti-fatigue strategies and products. In:Matthews G, et al.(eds), The Handbook of Operator Fatigue, pp209-224. Ashgate Publishing Limited, Great Britain, 2012
5)渡辺恭良,水野 敬:疲労と回復の科学,日刊工業新聞社,東京,2018
. 34:4-32, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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