特集 ビッグデータ時代のゲノム医学
Ⅰ.ゲノム医学の進歩
加齢黄斑変性から探る多因子疾患のゲノム解析の潮流
著者:
秋山雅人1
所属機関:
1九州大学大学院医学研究院眼病態イメージング講座
ページ範囲:P.108 - P.113
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多因子形質の関連座位を同定する手法であるゲノムワイド関連解析(genome-wide association study;GWAS)の開発から,18年が経過しようとしている。その間,全ゲノムインピュテーション1)による対象遺伝的変異数の増加,エクソンや特定の形質に特化したカスタムジェノタイピングアレイ2,3),近縁関係や人口構造化の混合モデルによる調整4,5),ポリジェニック効果の証明6),LDスコア回帰7)によるGWASのバイアスの定量化など,様々な遺伝統計学的解析技術の進歩があった。更には,世界各国のバイオバンクの整備が進み,2018年からは100万人規模のGWASも報告され8,9),GWASは解析手法の進歩や大規模化により,今も進化を続けている。しかし,その結果がどのように医療や医学研究に影響を与えたかについては,十分に議論されていないように思われる。
本稿では,多因子疾患のゲノム研究の進歩について振り返ることを目的に,1つの例として遺伝率が高い眼科疾患である加齢黄斑変性に着目した。関連解析がどのように進んできたか,ゲノム研究からどのように臨床研究が行われてきたかについて概説し,これからの医療や医学研究における役割について筆者の考えを述べたい。