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文献詳細

雑誌文献

生体の科学71巻4号

2020年08月発行

文献概要

特集 細胞機能の構造生物学 Ⅰ.細胞骨格の構造生物学

繊毛の構造と機能

著者: 吉川雅英1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科生体構造学分野

ページ範囲:P.281 - P.285

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 ヒトをはじめとする真核生物の繊毛は,プロペラやアンテナの働きをする重要な細胞内小器官である。単細胞の緑藻クラミドモナスや精子では,ほぼ繊毛と同じ構造を持つ鞭毛がプロペラとして働いている。ただし,原核生物の鞭毛は全く異なる細胞内小器官なので,最近では真核生物の鞭毛も含めて繊毛と呼ばれることが多い。
 繊毛は,身体の中で様々な役割を果たしていることから,繊毛の遺伝子変異や欠損が起こると様々な病気を引き起こし,それらは繊毛病(ciliopathy)と呼ばれる。実際,筆者もヘルシンキの繊毛に関する学会で繊毛病患者に会ったことがある。欧州や米国には繊毛病の患者団体があり,基礎研究を含めた学会に参加して繊毛病の研究を応援してくれているのである。話す機会のあった患者はまだ小学生くらいの女の子で,聞いてみると筆者らの研究室で働きを解明したCCDC39という遺伝子欠損が原因で,気管支炎に罹りやすいのだという。ただ,感染症に気をつけることで,かなりの程度通常の生活を送ることができているようであった。筆者らの研究は主に基礎的な部分ではあるが,将来的にこのような患者の役に立つことができれば,と思いを新たにした。

参考文献

. 116:9370-9379, 2019
. 8:15035, 2017
. 179:909-922.e12, 2019
. 17:201-208, 2020
. 346:857-860, 2014
. 10:1143, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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