文献詳細
特集 細胞機能の構造生物学
Ⅱ.細胞膜
文献概要
食物消化時の胃の中は強い酸性である(pH 1)。細胞内溶液が中性(pH 7)であることを考慮すると,この状況は実に100万倍のH+濃度勾配に相当する。これは胃プロトンポンプが“酸”の実体であるH+を能動輸送することで作り出されている。ヒトの遺伝子にはカチオン輸送体が数多くコードされているが,われわれの体には,胃のほかにこれほど酸性度の高い,もしくは急峻なカチオンの濃度勾配を持った組織は存在しない。胃プロトンポンプは,どのようにして強い酸性溶液を作り出しているのであろうか? 胃プロトンポンプの複数の結晶構造によってそのしくみが明らかになってきた1)。
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