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文献詳細

雑誌文献

生体の科学71巻4号

2020年08月発行

文献概要

特集 細胞機能の構造生物学 Ⅳ.植物の構造

環境変化に応じて光化学系Ⅰが形成する様々な超複合体の構造

著者: 田中秀明1 栗栖源嗣1

所属機関: 1大阪大学蛋白質研究所蛋白質構造生物学研究部門蛋白質結晶学研究室

ページ範囲:P.348 - P.352

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 植物や藻類,光合成細菌などが持つ反応中心(reaction center;RC)は,光エネルギーを化学エネルギーに変換する膜タンパク質複合体である。キノン型と鉄-硫黄型の2種類に大別され,酸素発生型光合成の場合にはキノン型RCをコアに持つ複合体を光化学系Ⅱ(photosystem II;PSII),鉄-硫黄型RCを持つ複合体を光化学系Ⅰ(photosystem I;PSI)と呼び,生物種によって多量体を形成したりアンテナ系タンパク質を結合したりして,超複合体構造をとることが知られている。本稿で取り上げるPSIは構造形成の観点から,①緑色硫黄細菌などが持つ単純な鉄-硫黄型RC,②RCに電子伝達などの機能サブユニットが結合したPSIコア複合体,③PSIコア複合体が会合したオリゴマー構造,④PSIコア複合体にアンテナ系タンパク質が結合したPSI超複合体の4つに区別して議論できる。
 近年,植物や緑藻が周囲の光環境に応じ,PSIコア複合体の内部アンテナに加えて集光アンテナであるLHCI(light-harvesting chlorophyl protein complex I)やLHCIIを動的に配置してPSIIとPSIで励起バランスを調整する“ステート遷移”の分子メカニズムも明らかになってきた。その環境適応の様式が生物種によって多様であることも興味深い点である。本稿では,PSIが形成する様々な超複合体の構造形成の観点から幾つかの研究例を紹介したい。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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