icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学72巻1号

2021年02月発行

文献概要

特集 小脳研究の未来 Ⅰ.発生発達

ゼブラフィッシュ小脳神経回路の発生と機能

著者: 清水貴史12 日比正彦12

所属機関: 1名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻動物器官機能学グループ 2名古屋大学生物機能開発利用研究センター

ページ範囲:P.3 - P.8

文献購入ページに移動
 小脳は協調的な運動や運動学習の制御だけでなく,古典的恐怖条件づけや学習における報酬期待などの認知・情動機能にも関与している1)。小脳の発生と機能は主に哺乳類を用いて研究されてきたが,近年ゼブラフィッシュを用いた研究も発展してきた。ゼブラフィッシュは体外で発生し,初期仔魚期の体は透明であり(色素を含まない突然変異体も利用可能である),発生が早い。また,ゼブラフィッシュの脳は哺乳類の脳よりも小さく単純であるが,構造や機能が保存されており,脊椎動物の脳の発生と機能を研究するための汎用性の高いモデルになりつつある。更に,ゼブラフィッシュを用いた脳の発生と機能を研究するための様々なツールや手法が発展してきた。これらには,外来の遺伝子を持つトランスジェニックゼブラフィッシュや,脳の発生や機能に関係ある遺伝子の変異体がある。また,CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集により,興味のある遺伝子を破壊したり,改変することも容易である。神経回路機能の研究には,Ca2+インジケーターや電圧センサーを用いたニューロン活動のライブイメージングや光遺伝学ツールによる機能操作が可能である。仔魚期においては,脳の小ささを生かした全脳イメージングも可能であり,興味のある神経領域のみならず他の領域との関連性を調べることができる。
 このように,ゼブラフィッシュを用いた研究は,他の脊椎動物では得られない重要な情報を得られる可能性がある。本稿では,ゼブラフィッシュの小脳発生と機能について哺乳類との比較を交えて概観する。

参考文献

. 688:62-75, 2019
. 330:406-426, 2009
. 72:282-301, 2012
. 397:1-17, 2015
. 54:373-389, 2012
. 59:228-243, 2017
. 12:736-741, 2000
. 401:161-164, 1999
. 386:181-190, 2014
. 121:437-447, 2004
. 11:82-88, 2001
. 343:1-17, 2010
. 455:393-408, 2019
. 147:dev190603, 2020
. 8:9, 2013
. 144:1462-1471, 2017
. 525:1558-1585, 2017
. 485:471-477, 2012
. 116:2067-2080, 2016
. 111:11846-11851, 2014
. 166:49-60, 2010
. 66:365-370, 2005
. 11:110, 2010
. 153:143-148, 2004
. 6:20, 2010
. 31:8708-8712, 2011
. 19:170-177, 2012
. 7:11865, 2017
. 180:536-551.e17, 2020
. 23:94-102, 2020
. 28:2445-2451.e3, 2018
. 9:3040, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら