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特集 小脳研究の未来 Ⅱ.シナプス・神経回路
小脳への感覚信号の伝達経路
著者: 久保怜香1 橋本浩一1
所属機関: 1広島大学大学院医系科学研究科神経生理学
ページ範囲:P.18 - P.22
文献購入ページに移動 体性感覚刺激が延髄下オリーブ核を介して小脳のプルキンエ細胞に伝達されることはよく知られている。しかし,その伝達経路についてはいまだ不明な点が多い。本稿では,マウス口辺ヒゲ領域から小脳Crus Ⅱプルキンエ細胞への下オリーブ核を介した感覚情報伝達に着目し,その伝達経路について最近の筆者らの研究を含め概説する。
小脳皮質からの主要な出力を担うプルキンエ細胞には,顆粒細胞から平行線維を介する入力と,延髄下オリーブ核から登上線維を介する入力の2種類の主要な興奮性入力がある。このなかで下オリーブ核から登上線維を介する入力は,ほとんどの場合1個のプルキンエ細胞に対し1本しか入力していないが,プルキンエ細胞の近位樹状突起に絡みつくように多数のシナプスを形成するため,1回の活動で非常に大きな興奮性シナプス後電位を発生する。このため通常の状態では,登上線維のシナプス伝達により,必ずプルキンエ細胞に最初の活動電位に引き続き複数の小さな活動電位が連なるcomplex spike(CS)と呼ばれる活動電位が発生する(図1A,D)。このシナプス伝達は,同時に電位依存性Ca2+チャネルを活性化して樹状突起全体に細胞内Ca2+上昇を引き起こし,長期抑圧などのシナプス可塑性の誘導に関与する。
小脳皮質からの主要な出力を担うプルキンエ細胞には,顆粒細胞から平行線維を介する入力と,延髄下オリーブ核から登上線維を介する入力の2種類の主要な興奮性入力がある。このなかで下オリーブ核から登上線維を介する入力は,ほとんどの場合1個のプルキンエ細胞に対し1本しか入力していないが,プルキンエ細胞の近位樹状突起に絡みつくように多数のシナプスを形成するため,1回の活動で非常に大きな興奮性シナプス後電位を発生する。このため通常の状態では,登上線維のシナプス伝達により,必ずプルキンエ細胞に最初の活動電位に引き続き複数の小さな活動電位が連なるcomplex spike(CS)と呼ばれる活動電位が発生する(図1A,D)。このシナプス伝達は,同時に電位依存性Ca2+チャネルを活性化して樹状突起全体に細胞内Ca2+上昇を引き起こし,長期抑圧などのシナプス可塑性の誘導に関与する。
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