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特集 小脳研究の未来 Ⅱ.シナプス・神経回路
小脳神経回路のシナプス特性
著者: 川口真也1
所属機関: 1京都大学大学院理学研究科生物物理学教室
ページ範囲:P.36 - P.40
文献購入ページに移動 神経細胞の軸索起始部で発生した活動電位は,終末に至るとCa2+を流入させて伝達物質を放出させ,別の細胞と接続するシナプスで情報が伝達される。活動電位が高速で軸索を伝導することと,活動電位の到達からわずか1msで伝達物質を放出できることが,神経系の高い情報処理能力の基礎となる。シナプス伝達のしくみについて,様々な標本でパッチクランプ法を用いた機能解析により知見が蓄積してきた。一方で,こうした理解は多くの場合,シナプス後部の応答から推定されたもので,軸索から終末に至る活動電位の伝導やシナプス前部での開口放出の動態などについて,不明点も多く残っている。これは,シナプスが通常1μm程度しかない微小構造であるため,シナプスの高速動態を直接実験的に記録することが難しいことに起因する。ところが,近年の計測技術の発達により,軸索終末からのパッチクランプ記録や蛍光イメージングによるシナプス小胞動態の直接的な解析が可能になってきた。特に小脳神経回路については構成するシナプスのほとんどから直接記録が報告され,シナプスの機能を規定するパラメータの詳細がわかりつつある。
本稿では,その小脳神経回路シナプスに焦点を当てて最近の知見を概説し,動物の運動を調節する小脳回路での情報の流れとシナプスの機能設計の合目的性について考察したい。
本稿では,その小脳神経回路シナプスに焦点を当てて最近の知見を概説し,動物の運動を調節する小脳回路での情報の流れとシナプスの機能設計の合目的性について考察したい。
参考文献
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