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特集 小脳研究の未来 Ⅲ.システム・運動制御
小脳と時間的差分(TD)学習
著者: 大前彰吾1 大前景子1
所属機関: 1
ページ範囲:P.46 - P.51
文献購入ページに移動[概要]小脳のプルキンエ細胞への登上線維(climbing fiber;CF)からの入力信号は,小脳の学習を引き起こす教師信号である。筆者らは,瞬目条件づけの前後でマウスのCF信号に含まれる情報を調べた。従来の通説どおり,CF信号は思わぬ嫌悪刺激に対する事後の予測誤差を伝えていた。加えて,マウスが嫌悪刺激の予測を学習し終えたとき,嫌悪刺激の到来を事前に警告する信号がCFで伝えられるという驚くべき発見をした。この信号パターンは,ドーパミン信号と同様に,時間的差分学習(temporal difference learning;TD学習)における学習信号の特性を備えており,小脳がTD学習をできる可能性を示した。更に,この事前の警告信号を生成している回路を探索し,それに小脳自体が関与していることを明らかにした。これは,小脳への教師信号の生成を小脳自身が担っているという大変興味深い事実を示唆している。
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