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特集 小脳研究の未来 Ⅳ.病態
遺伝子改変疾患マウスと小脳異常
著者: 細井延武1 平井宏和1
所属機関: 1群馬大学大学院医学系研究科脳神経再生医学分野
ページ範囲:P.69 - P.73
文献購入ページに移動 医学研究において,疾患の状態を作り出すことはたいへん重要であり,実験動物(例えばマウス)を用いて研究を開始する際の最初の実験操作となる。その最初の操作には,圧迫,損傷,熱操作(高温・低温への曝露)などの機械的・物理的な操作や,薬物の投与などの化学物質による操作などが挙げられるが,近年では,生命の設計図である遺伝子を直接操作して,生体内に異常な状態を作り出し疾患を引き起こすことで,その疾患の原因と詳細なメカニズムを探る研究手法が一般的となっている。研究対象としたい疾患の原因となる遺伝子の変異が既にわかっている場合には,研究開始時にどのような遺伝子操作をするべきかが明確であるが,その疾患の遺伝的原因やメカニズムが全く不明な場合,ある遺伝子操作によって“偶然”疾患の状態になった場合をその研究の出発点とするしかない。
当研究室では,今まで遺伝子改変技術による疾患マウスを用いてその疾患のメカニズムを明らかにする研究を行ってきた。本稿では,ある遺伝子改変によって期せずして“偶然”作出できた疾患マウスを詳細に調べることにより,振戦(体の震え)のメカニズムに迫ることができた研究成果の例1)と,遺伝的原因が同定されているものの,生体内での機能的異常が不明であった指定難病の小脳失調疾患の細胞内メカニズムを解明し,既承認薬を用いた新規治療法の可能性を指摘できた研究例2)について,研究現場の率直でリアルな視点から紹介したい。
当研究室では,今まで遺伝子改変技術による疾患マウスを用いてその疾患のメカニズムを明らかにする研究を行ってきた。本稿では,ある遺伝子改変によって期せずして“偶然”作出できた疾患マウスを詳細に調べることにより,振戦(体の震え)のメカニズムに迫ることができた研究成果の例1)と,遺伝的原因が同定されているものの,生体内での機能的異常が不明であった指定難病の小脳失調疾患の細胞内メカニズムを解明し,既承認薬を用いた新規治療法の可能性を指摘できた研究例2)について,研究現場の率直でリアルな視点から紹介したい。
参考文献
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