文献詳細
特集 組織幹細胞の共通性と特殊性
Ⅱ.幹細胞による組織・臓器構築:Q.発生学における幹細胞の位置づけとは?
文献概要
高い再生能を有する肝臓には,古くから幹細胞(肝幹細胞)が存在すると考えられていた。実際,肝臓の発生過程では,自己複製能と多分化能(肝臓を構成する上皮細胞である肝細胞と胆管上皮細胞への二分化能)という幹細胞に特徴的な性質を有する“肝芽細胞”が存在する。また,成体の肝臓においても,慢性的な肝障害によって幹細胞の性質を有する細胞が出現し,肝再生に寄与することがわかっている。しかし,肝幹細胞は造血幹細胞や腸上皮幹細胞などとは異なり,恒常的な組織の維持には関与しないという認識が現在では一般的である。したがって,肝臓において幹細胞の性質を有する細胞は,肝臓の発生過程と慢性的な肝障害による再生過程で一時的に機能する細胞と考えられる。このことから,肝臓には,血液や皮膚,腸管など,幹細胞によって組織恒常性が維持される典型的な幹細胞システムが存在する組織とは一線を画する,肝臓特異的な幹細胞システムが存在するといえる。それゆえ,肝臓において幹細胞の性質を有する細胞については,幹細胞と呼ぶよりもむしろ前駆細胞と呼ぶほうが適切ではないかと考えられ,筆者らも“肝前駆細胞”として扱うこととする。
本稿では,肝臓の発生過程でその組織形成を担う肝前駆細胞について筆者らの研究成果を中心に概説すると共に,肝前駆細胞の運命決定因子の同定と,他種細胞から肝前駆細胞への運命転換誘導に関する研究成果も紹介する。
本稿では,肝臓の発生過程でその組織形成を担う肝前駆細胞について筆者らの研究成果を中心に概説すると共に,肝前駆細胞の運命決定因子の同定と,他種細胞から肝前駆細胞への運命転換誘導に関する研究成果も紹介する。
参考文献
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掲載誌情報