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文献詳細

雑誌文献

生体の科学72巻2号

2021年04月発行

文献概要

特集 組織幹細胞の共通性と特殊性 Ⅲ.多様性を示す幹細胞:Q.分化決定と可変性の関係とは?

神経堤—“第4の胚葉”の分化多様性は如何にして獲得されたか?

著者: 栗原裕基1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科代謝生理化学分野

ページ範囲:P.146 - P.150

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 神経堤(あるいは神経冠)(neural crest)は,脊椎動物の胚発生において神経外胚葉と表皮外胚葉の境界に生ずる幹細胞集団である1)。神経堤細胞は,神経板から神経管が形成される過程で,その辺縁から上皮間葉転換(epithelial to mesenchymal transition;EMT)を経て遊走し,知覚および交感神経細胞やグリア細胞,副腎髄質細胞,色素細胞のほか,頭部では骨,軟骨,歯牙,血管平滑筋など間葉系組織の構成細胞に分化する。神経堤は間葉系細胞への分化の有無により,前後(頭尾)軸に沿って頭部(cranial)神経堤と体幹部(trunk)神経堤の2つの領域に大きく分けられる。ニワトリ胚ではその境界は第3-4体節間に相当する。この境界前後(第1-7体節)と最後尾(第28体節以降)の領域からは腸管神経叢を形成する迷走神経が派生し,それぞれ迷走(vagal)・仙骨(sacral)神経堤として区別されることもある(図1)。神経堤の発生異常は,頭部顔面形成異常やヒルシュスプルング病,先天性中枢性低換気症候群などの先天性疾患を来すことが知られており,神経堤細胞に起源を有する神経芽腫や神経線維腫症などの腫瘍性疾患も含めて,神経堤症(neurocristopathy)と総称されている2)

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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