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文献詳細

雑誌文献

生体の科学72巻2号

2021年04月発行

文献概要

特集 組織幹細胞の共通性と特殊性 Ⅲ.多様性を示す幹細胞:Q.分化決定と可変性の関係とは?

間葉系幹細胞の基礎研究と臨床応用

著者: 八尾尚幸1 新井文用12

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院応用幹細胞医科学部門がん幹細胞医学分野 2九州大学大学院医学研究院応用幹細胞医科学部門幹細胞再生修復医学分野

ページ範囲:P.151 - P.154

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 1960年代後半に,Friedensteinらにより骨髄中に線維芽細胞様の間葉系前駆細胞が存在することが初めて報告された1)。それらの細胞が骨細胞,軟骨細胞,脂肪細胞などに分化する多分化能を持ち,自己複製することから組織幹細胞であると認識された。この細胞は,その後,Caplanらにより間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell;MSC)という呼称が提唱された2)。MSCは間葉系組織のあるすべての臓器に存在していると考えられており,MSCはサイトカインやケモカインなどの液性因子,また,コラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスを分泌し,組織内の細胞保護や組織修復,更には組織内の炎症や免疫の制御など様々な役割を持ち,組織の恒常性を維持していると考えられている。MSCは治療に有効な様々な作用を有していることに加え,生体組織から採取可能であるため,受精卵から作製する胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES cell)のような倫理的な問題は少なく,遺伝子導入して人工的に作製する人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS cell)と比較してがん化の危険性が低く,安全性が高いと考えられている。近年では,MSCを利用した細胞治療が盛んに行われている。本稿ではMSCの生体内での役割,更にMSCを利用した細胞治療について概説する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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