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文献詳細

雑誌文献

生体の科学72巻2号

2021年04月発行

文献概要

特集 組織幹細胞の共通性と特殊性 Ⅳ.幹細胞のクローン性増殖とAging:Q.幹細胞のLife Cycle

腸上皮の老化に関わるストレス応答の2方向性

著者: 小笠原暢彦1 油井史郎2 渡辺守3

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院消化器病態学 2東京医科歯科大学統合研究機構再生医療研究センター 3東京医科歯科大学高等研究院

ページ範囲:P.172 - P.176

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 体内で最も早いターンオーバーを示す腸上皮の恒常性を維持するのが上皮幹細胞である。恒常状態で静的細胞動態を示す血液幹細胞などの多くの組織と同じ静的な特性を示す一群の細胞1)という考え方だけでなく,細胞周期が高回転する増殖性細胞という考え方もあり2),活発な議論の絶えない実に興味深い研究領域となっている。
 近年腸幹細胞に関して,加齢・炎症などのストレス反応を通じた老化の詳細が明らかになり,幹細胞機能の低下によるバリア機能・再生能の低下が大腸がんなどの疾患リスクにつながることがわかってきた3)。この過程には代謝動態の変化,epigeneticsの変化,細胞外基質をはじめとする微小環境の変化などの様々な因子が密接に関与している。本稿では,前半で腸上皮幹細胞の特性とその老化の概要に関する最近の知見を概説し,後半では微小環境,特に細胞外基質の変化が幹細胞に与える影響が,単に老化という概念だけでは理解しきれず,上皮細胞の幼若化・胎児化という新しい考え方が有用であることを示した筆者らの報告4)を紹介する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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