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特集 生物物理学の進歩—生命現象の定量的理解へ向けて
特集「生物物理学の進歩—生命現象の定量的理解へ向けて」によせて フリーアクセス
著者: 青木一洋12
所属機関: 1自然科学研究機構基礎生物学研究所 2自然科学研究機構生命創成探究センター
ページ範囲:P.190 - P.190
文献概要
さて,こういった状況において,生命科学の研究者はどうやって生命現象を理解すればよいのでしょうか? 今後の生命科学研究のあるべき1つの方向性は,“定量性”だと筆者は考えます。生物物理学は,Schrödingerの時代よりも前から生命現象を物理的に扱ってきた学問で,そこには定量性を志向する考え方が根づいています。日本は伝統的に生物物理学が盛んで,これまでに素晴らしい成果が幾つも発表されています。生物学者のNurseがSchrödingerへのオマージュを込めた本を刊行したのも,こうした研究展開への期待感を映したものかもしれません。事実,彼の本には,「情報としての生命」という章を設けて,情報や数理生物学の重要性を説明しています。奇しくも,2019年10月から新学術領域「情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理」(領域代表:岡田康志)が立ち上がりました。この領域では,生命現象を題材として,情報を力・エネルギーなどと同列に物理的対象として議論する新しい物理学を構築することを目指しています。本特集は,この新学術領域に大なり小なり関わりのある方々にご寄稿いただきました。分子から細胞,個体レベルに至る様々な階層の生命現象を物理の言葉で表現した,まさに最新の生物物理学研究をお届けできるものと確信しております。
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