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特集 生物物理学の進歩—生命現象の定量的理解へ向けて Ⅰ.分子レベル
化学反応ネットワーク上の化学熱力学と情報幾何学
著者: 伊藤創祐1 吉村耕平1
所属機関: 1東京大学大学院理学系研究科生物普遍性研究機構
ページ範囲:P.212 - P.216
文献購入ページに移動一方で,細胞内におけるゆらぐ化学反応に関する熱力学の研究が近年盛んに行われ,シグナル伝達系への応用にも注目が集まっている。このことは,21世紀に入ってからの確率過程上での熱力学であるゆらぐ系の熱力学2)(stochastic thermodynamics)の理論的な発展によって,細胞内の非平衡な環境下で起きる化学反応の熱力学的な性質が議論可能になってきたことが背景にある。そして更に,化学反応ネットワーク理論とゆらぐ系の熱力学の理論が,化学熱力学の名のもとで結びつきつつある。レート方程式で記述される化学反応ネットワーク上での化学熱力学の理論が,ゆらぐ系の熱力学のアナロジーの視点から見直され,化学熱力学のダイナミクスの理論が整理されてきている3,4)。
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