文献詳細
特集 生物物理学の進歩—生命現象の定量的理解へ向けて
Ⅱ.細胞レベル
文献概要
大腸菌は数μm程度の単一細胞でありながら1つの生命体として完結しており,小さな細胞の中に環境センシング能,情報処理能,運動能が存在している。個々の細胞はこの走化性システムを巧みに制御し,自身に有益な環境へ移動する(図1A)。細胞内は試験管内のような均一な環境ではなく,また個々の細胞ではタンパク質の発現量などが異なるため,筆者らは細胞内で起こる情報伝達を,生きた大腸菌1細胞内のタンパク質の活性,局在などを計測し,それによって引き起こされる走化性応答を同時に計測して,両者の相関関係を定量的に理解することを目指してきた。ここでは,筆者らの最近の研究結果をもとに,刺激のない安定した環境下における大腸菌の情報伝達について考察したい。
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