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文献詳細

雑誌文献

生体の科学72巻4号

2021年08月発行

特集 グローバル時代の新興再興感染症への科学的アプローチ

特集「グローバル時代の新興再興感染症への科学的アプローチ」によせて フリーアクセス

著者: 長谷川秀樹1

所属機関: 1国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター

ページ範囲:P.280 - P.280

文献概要

 1980年代,抗生物質の開発により結核患者は激減し,ワクチンの使用により人類は天然痘撲滅に成功した。「感染症の時代は終わった! 人類は今後感染症に悩まされることはないだろう」といわれた。しかし,現実はヒト社会の変化により感染症の原因病原体の構成は刻々と変化を繰り返しており,次々と新しい感染症の発生や過去に克服されたはずの感染症の再興が世界各地でみられている。その後エイズが急増,更にいままでみられなかった病原体による感染症の発見と,その流行が社会問題化している。それらが新興感染症(emerging infectious diseases)である。世界的に国境を越えたヒトが大量移動する現代では,かつては一地方にとどまっていた病原体が瞬く間に世界中に拡散する。また,ヒトと動物の生活圏の変化により,野生動物にとどまっていた微生物がヒトに病原微生物として感染する例もあり,多くの場合,人獣共通感染症(zoonosis)が新興感染症の元となっている。核酸解析技術の発展により,新規の病原体が同定されることも多くなっている。2021年現在,われわれは過去100年で最も厳しい新興感染症との戦いを強いられている。言うまでもなく新型コロナウイルスSARS-CoV-2の出現とパンデミックである。現在,新型コロナウイルスの検知から約1年半経つが,これだけ短期間に世界中で集中的に研究がされ,大規模にワクチン接種ができるまでになった疾患はない。現在,PubMedでCOVID-19のキーワードで142,137件がヒットする。ウイルスの同定から90年経ったinfluenzaの141,187件を超えているのには驚きである。新興再興感染症について,病原因子の検出,診断,感染様式や病態の解明,更に治療薬,ワクチンの開発とその課題は多様であり,それらの科学的知見が集積し速やかに実社会において実装されていくことは心強い。
 本特集においては,新興再興感染症に対する科学的アプローチと称して,新興再興感染症への病原微生物の増殖機序,病態解明から治療薬およびワクチン開発までを科学的視点から捉えられるように原稿を用意していただいた。対象はSARS-CoV-2を筆頭に,パンデミックポテンシャルのある呼吸器感染症,AIDS,デングウイルス,ジカウイルス,国内でも毎年患者の発生があることが近年明らかになったマダニ媒介性SFTSウイルス,出血熱ウイルス,パラミクソウイルスや肝炎ウイルスまで幅広く取り上げた。正に対応に多忙のところ,多くの先生方にご執筆いただきましたことを感謝いたします。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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