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特集 グローバル時代の新興再興感染症への科学的アプローチ Ⅰ.呼吸器感染症へのアプローチ
インフルエンザの抗HAステム抗体とユニバーサルワクチン
著者: 齊藤慎二1 鈴木康司2 小谷治3 相内章1
所属機関: 1国立感染症研究所感染病理部 2国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター 3国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター
ページ範囲:P.289 - P.293
文献購入ページに移動感染症の最も効果的な制御法の一つは,ワクチン接種による免疫の獲得である。現在,インフルエンザワクチンは大きく分けると2つのタイプ(スプリットワクチンを代表とする注射型ワクチンおよび経鼻接種型生ワクチン)が用いられており,流行株の抗原性がワクチン株と一致した場合,一定の有効性がある。一方,季節性インフルエンザウイルスは,主要な表面抗原であるヘマグルチニン(HA)への点突然変異の導入などにより表面抗原を変化させる抗原連続変異を起こすことがあり,もしワクチン株と流行株の間の抗原性が異なった場合はワクチンの有効性が低下してしまう。そのため,インフルエンザワクチンは毎年流行予測に基づいてワクチン株を更新する必要が生じる。しかしながら,パンデミックは幾つかのインフルエンザウイルス間(異なる動物インフルエンザウイルス間を含む)で,ゲノムの再集合を起こす抗原不連続変異から生じた今までの流行株と抗原性の異なる新型インフルエンザウイルスにより引き起こされるため,有効性の高いワクチンを前もって準備することは非常に難しい3,4)。
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