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特集 グローバル時代の新興再興感染症への科学的アプローチ Ⅲ.デング・ジカ・SFTS・出血熱へのアプローチ
SFTS患者検体を用いた病理学的探索によるウイルス性出血熱の新規発病機構の発見
著者: 宮本翔1 鈴木忠樹1
所属機関: 1国立感染症研究所感染病理部
ページ範囲:P.311 - P.315
文献購入ページに移動ウイルス性出血熱では,病原体によらず臨床病態の類似性がみられる一方で,その発病機構は病原体により異なる。感染症の発病機構に関する知見は,適切な予防・治療法の開発などの感染症対策を講じていくために必要不可欠である。感染症の発病機構の解明には,感染症で亡くなった方の病理解剖による解析が有用である。これまで,わが国ではSFTSで亡くなった方の多くで病理解剖が実施され,様々な知見が報告されてきた。筆者らはSFTS患者の病理解析を行い,大型異型リンパ球の壊死性リンパ節炎や,リンパ組織での血球貪食像というウイルス出血熱のなかでも珍しい独特な病理所見があることを報告した1)。更に,リンパ組織と非リンパ組織の両方でSFTSウイルス抗原はIgGを発現するB細胞に局在し,B細胞から形質細胞へと分化する過程の形質芽球がウイルスの標的細胞であることを見いだし2),SFTSは多くのウイルス性出血熱で明らかにされてきた単球系細胞が中心的な役割を果たす発病機構とは全く異なる,B細胞を主軸とした独特な発病機構を有していることを明らかにした。本稿では,それらの成果と今後の課題を最新の知見を踏まえて紹介する。
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