icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学72巻4号

2021年08月発行

文献概要

--------------------

あとがき フリーアクセス

著者: 松田道行

所属機関:

ページ範囲:P.367 - P.367

 新興再興感染症という言葉は筆者がまだ国立感染症研究所にいた2,30年前にできたように記憶します。米国の研究者のダニ脳炎の講演を聞いた時だったか,人間が森林開発を続ける限り新興感染症はなくならないのだろうかと質問したことがありました。彼の答えはYES。不幸にしてその予言は的中し,ついにはCOVID-19パンデミックを引き起こすに至りました。ただ,うれしい誤算だったことは科学の進歩もすさまじく,新型ウイルスに対する方策が瞬く間に確立できるようになっていたことです。アフリカのサルから広がったHIVウイルスに対する治療薬ができるまで約10年でした。一般の薬剤開発は20年,ウイルスに対する薬は無理と信じられていたことを考えれば驚異的速さでした。SARS-CoV-2に至っては,中国で発見されてからワクチン開発までなんと1年もかかっていません。しかし,いま出回っているワクチンの多くが,mRNAやウイルスベクターという前例のない,そう簡単には認可されるはずもないタイプのワクチンであったことは,今後の日本を考えるうえで極めて重要です。失敗を恐れるがゆえにベンチャー企業がなかなか育たないという風土をなんとかしなければいけません。今度の災厄が,日本人の精神構造をも変えてくれること期待します。
 最後になりましたが,COVID-19に関わる業務で多忙中のところを編集いただいた長谷川先生ならびにご寄稿いただいた諸先生方に厚くお礼申し上げます。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら