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文献詳細

雑誌文献

生体の科学72巻6号

2021年12月発行

文献概要

特集 新組織学シリーズⅡ:骨格筋—今後の研究の発展に向けて Ⅰ.骨格筋収縮研究の多様な側面

筋小胞体カルシウムポンプの構造とイオン輸送機構

著者: 豊島近1

所属機関: 1東京大学定量生命科学研究所

ページ範囲:P.505 - P.509

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 骨格筋の筋原線維は袋状の構造体に取り囲まれている。この袋状構造体は筋小胞体と呼ばれ,Ca2+の貯蔵庫である。筋収縮の際にはこの貯蔵庫からCa2+放出チャネルを通じてCa2+が放出され,弛緩の際にはCa2+ポンプ〔sarco(endo)plasmic reticulum calcium ATPase;SERCA〕がCa2+を小胞体内腔に汲み上げ,筋細胞中のCa2+濃度をサブμMまで下げる。このようなCa2+による筋収縮の制御は,「Ca2+が生体反応を制御する」というCa2+説の最も顕著な例であるが,江橋による「筋肉の弛緩因子は断片化された筋小胞体であり,弛緩は膜にあるATPaseによってCa2+が輸送されるために起こる」との発見1)がCa2+説の嚆矢となった(https://brh.co.jp/s_library/interview/ 12/)ことは,今や科学の歴史に埋もれかかっているように感じられる。筆者は2000年に最初の結晶構造決定に成功して以来2),集中してCa2+ポンプの構造解析に取り組んできた。その結果,反応サイクルほぼ全体をカバーする14の中間体(うち4つは未発表)の構造決定に成功し(図1),輸送メカニズムの大略は理解できるようなった。ごく簡単に言えば,イオンポンプはミクロの手押しポンプのように働くのである(ただしレバーを押すのはATPではない)3)。本稿では,Ca2+ポンプの分子構造とイオン輸送メカニズムに関し,ごくごく大まかに述べてみたい。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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