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文献概要
特集 意識
特集「意識」によせて
著者: 吉田正俊1
所属機関: 1北海道大学人間知・脳・AI研究教育センター(CHAIN)
ページ範囲:P.2 - P.2
文献購入ページに移動 “意識”とは何であろうか? この問いはかつて哲学の問題と捉えられていたが,神経科学における計測技術の革新などによって,ここ数十年で急速に科学的な解明が進んできた。動物を対象としたシステム神経生理学では,両眼視野闘争の研究などで知覚的な意識に関わる神経活動が報告されてきた。また,ヒトを対象とした脳機能イメージングでは,ポジトロン断層法(PET)や機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて意識に関わる神経活動が計測されてきた。このような研究が明らかにしたのは,意識に関わっているのは,1つの神経細胞や脳部位ではなくて,ネットワークとしての脳だということだ。そこでやり取りされる情報に注目した“意識の理論”が提唱されるようになってきた。しかし意識とは,けっして知覚だけに関わるものではない。意識とは,身体を持つ自己によって経験されるものであり,内受容感覚に基づく情動,感情と深く関わるものだ。このような側面についての研究も進んでいる。このように私は意識の科学の現状を捉えている。
本特集ではこのような視点から,意識の科学に関連するトピックを扱っている研究者から寄稿していただいた原稿を,「Ⅰ.ヒトを対象とした実験的アプローチ」,「Ⅱ.動物を対象とした実験的アプローチ」,「Ⅲ.理論的アプローチ」の3つに分けて構成した。本特集が意識の科学における国内の重要な研究をすべてカバーしているとは言えないが,少なくとも意識研究という分野の幅広さを示すことはできたのではないだろうか。
本特集ではこのような視点から,意識の科学に関連するトピックを扱っている研究者から寄稿していただいた原稿を,「Ⅰ.ヒトを対象とした実験的アプローチ」,「Ⅱ.動物を対象とした実験的アプローチ」,「Ⅲ.理論的アプローチ」の3つに分けて構成した。本特集が意識の科学における国内の重要な研究をすべてカバーしているとは言えないが,少なくとも意識研究という分野の幅広さを示すことはできたのではないだろうか。
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