icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学73巻2号

2022年04月発行

文献概要

特集 DNA修復による生体恒常性の維持 Ⅰ.DNA修復の分子メカニズム

放射線によるDNA損傷の修復

著者: 松本義久1

所属機関: 1東京工業大学科学技術創成研究院ゼロカーボンエネルギー研究所

ページ範囲:P.110 - P.114

文献購入ページに移動
 放射線は物質を電離あるいは励起することによって作用を現す。生体を構成するあらゆる物質が放射線による電離あるいは励起を受けるが,放射線の様々な生体への影響はDNA損傷が主因であると考えられる。このことにはDNAの幾つかの特殊性が関わっていると考えられる。第一に,DNAは生命の設計図とも言われ,生体を維持するために必要な反応をつかさどるタンパク質の作り方を指令している。第二に,DNAは複製前には1細胞に1コピー,複製後も2コピーしか存在しない。第三に,DNAは極めて長い分子で,染色体DNA 1コピー当たり60億塩基対,総延長2mもあるため,どこかで損傷や切断を受けるリスクは非常に高い。第四に,DNAは遺伝情報物質として継承されるために細胞分裂の際に正確に複製,分配される必要があるが,損傷や切断はその大きな障害になる。

 放射線によって生じるDNA損傷には様々なものがある。X線1Gyを照射した場合,細胞1個当たり生じる塩基損傷が500個,DNA-タンパク質架橋が150個,一本鎖切断が1,000個,二本鎖切断(double strand break;DSB)が40個程度と言われている1)。DSBは数としては少ないが,生物効果に最も大きく寄与すると考えられている。本稿では特にDSB修復に焦点を当て,現状と課題を概説する。

参考文献

1)United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation:UNSCEAR 2000 Report to the General Assembly, with Scientific Annexes Volume II:Effects, p4, 2000
. 21:765-781, 2020
. 71:99-105, 2021
. 12:723847, 2021
. 600:748-753, 2021
. 23:125-140, 2021
. 22:2167, 2021
. 347:185-188, 2015
. 6:6233, 2015
. 22:890-897, 2015
. 11:123-134, 2020
. 81:3400-3409, 2021
. 82:177-189, 2022
. 31:6117-6126, 2003
. 8:66, 2017
. 8:16112, 2017
. 34:7-23, 2020
. 91:6098-6102, 1994
. 141:243-254, 2010
. 20:e47560, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら