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文献詳細

雑誌文献

生体の科学73巻2号

2022年04月発行

文献概要

特集 DNA修復による生体恒常性の維持 Ⅱ.DNA修復と疾患

放射線高感受性疾患

著者: 小林純也1

所属機関: 1国際医療福祉大学成田保健医療学部放射線・情報科学科

ページ範囲:P.134 - P.137

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 毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangiectasia;AT)は,リンパ腫を併発したAT患者の治療のために通常の治療線量のX線を照射した結果,結節性硬化症を併発したことによって,放射線高感受性であることが初めて報告された遺伝病である1)。その後,AT患者細胞が放射線高感受性と共に,染色体不安定性,放射線抵抗性DNA合成を示すことが報告され2),放射線細胞応答研究の有力な研究対象として注目され,その原因遺伝子ATMの同定,および機能解析が精力的に行われていった。また,長年のAT研究から様々なATバリアントが報告され,その代表例がナイミーヘン症候群(Nijmegen breakage syndrome;NBS)と毛細血管拡張性運動失調症類似疾患(ataxia- telangiectasia-like disorder;AT-LD)であり,放射線細胞応答,とりわけDNA二本鎖切断(DNA double strand break;DSB)損傷の修復機構の解明において,これら患者細胞が有効な研究材料として活用された。更にDSB修復の主要2機構の一つ,非相同末端結合(non-homologous end-joining;NHEJ)修復に機能する遺伝子に欠損を持つ遺伝性疾患においても放射線高感受性が報告されている。

 本稿では,これら代表的な放射線高感受性の遺伝性疾患について,細胞学的・臨床学的特徴,原因遺伝子とその機能について概説する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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