icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学73巻2号

2022年04月発行

文献概要

特集 DNA修復による生体恒常性の維持 Ⅱ.DNA修復と疾患

早期老化における染色体不安定性

著者: 嶋本顕1

所属機関: 1山口東京理科大学薬学部

ページ範囲:P.138 - P.142

文献購入ページに移動
 早老症ウェルナー症候群(Werner syndrome;WS)の原因遺伝子WRNが同定され1),この老化を抑制する遺伝子の研究が世界中で展開して25年が経過した。この間に多くの研究者がこの研究に参画し,WRNがコードするDNAヘリカーゼが実に様々なタンパク質と相互作用し,複製,修復,組換え,転写からヒストン修飾などに関与して,塩基レベルからクロマチンレベルにわたって染色体安定性を維持していることが明らかになった2,3)。これらの染色体イベントには主体となって機能する酵素/タンパク質が存在するが,WRNヘリカーゼはこれらのイベントの脇役/サポーターとしてfine-tunerの役割を果たしており,その機能異常は染色体不安定性を誘発してわずかな構造変化として染色体に蓄積し,全身性の細胞機能の破綻(タンパク質恒常性喪失,ミトコンドリア機能不全,分裂寿命の短縮,分化機能の低下など)を引き起こし,早期老化症状となって現れる3)

 一方,病態発症のメカニズムを解明するためには,がん細胞や線維芽細胞などの株化された細胞を用いた研究では限界があることから,WS患者細胞から樹立したiPS細胞を用いて,種々の組織細胞に分化誘導し,病態の再現と再生医療への応用を目指した研究も進められている4,5)。また,より厳密なメカニズム解析を行うため,ゲノム編集で変異WRN遺伝子を修正したiPS細胞が樹立されている6)

参考文献

. 272:258-262, 1996
. 6:10, 2015
. 6:1779, 2017
. 2:534-546, 2014
. 9:e112900, 2014
. 53:102360, 2021
. 54:443-452, 1998
. 22:82-84, 1999
. 9:640755, 2021
. 6:421-430, 2001
. 208:545-562, 2015
. 47:6796-6810, 2019
. 9:1387-1401, 2014
. 7:13785, 2016
. 47:3485-3502, 2019
. 77:528-541, 2020
. 175:558-570, 2018
. 27:320-331, 2016
. 12:247-256, 2013
. 203:929-942, 2013
. 348:1160-1163, 2015
. 30:1958-1961, 2007
. 568:511-516, 2019
. 568:551-556, 2019
. 586:292-298, 2020
. 9:e80664, 2014
. 32:1425-1439, 2013
. 306:1951-1953, 2004
. 24:16-17, 2000
. 90:119-129, 2014
. 31:1971-1982, 2021
. 2018:2984730, 2018
. 530:184-189, 2016
. 197:111526, 2021

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?