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文献詳細

雑誌文献

生体の科学73巻3号

2022年06月発行

文献概要

特集 リソソーム研究の新展開 Ⅰ.リソソームの新しい機能

破骨細胞における分泌リソソーム輸送の分子機構—リソソームのプロトンポンプによる小胞輸送因子のリクルート

著者: 松元奈緒美1 中西(松井)真弓1

所属機関: 1岩手医科大学薬学部生物薬学講座機能生化学分野

ページ範囲:P.207 - P.211

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 周知のように,リソソームは細胞内外の不要物や異物を取り込んで分解するオルガネラである。では,分解する対象が細胞よりもはるかに大きくて細胞内に取り込めない場合,どうするのだろうか。

 骨を分解・吸収する破骨細胞は,分泌リソソームと呼ばれるよいしくみを持っている。破骨細胞は,単球・マクロファージ系由来の前駆細胞同士が融合して生じる多核の細胞で,in vitroの実験系では直径0.1mmほどまで大きくなるが,それでも骨のほうがはるかに大きい。そこで,破骨細胞はアクチンリングを介して吸盤のように骨に張りつき,リソソームが骨側の形質膜(波状縁)へ向かって移動・膜融合して骨吸収窩(骨と細胞の隙間)にリソソームの分解酵素を分泌し,コラーゲンなどの骨のタンパク質成分を分解する(図1A)1,2)。“分泌リソソーム”と呼ばれるこうしたしくみによって,分泌リソソーム膜に局在していた液胞型プロトンポンプ(V-ATPase)は形質膜に輸送され,骨吸収窩に向かってプロトンを放出する。骨吸収窩の酸性化は,リソソーム酵素が働く至適条件を与えるために,また,骨を形成しているリン酸カルシウムを溶解するために必要である1,2)。つまり,分泌リソソームにより骨吸収のための環境を整えられた骨吸収窩は,細胞外に形成された巨大なリソソームと捉えることができる。

参考文献

1)古賀貴子,高柳 広:骨吸収のメカニズム—破骨細胞の分化と活性化機構—.高柳 広 編:骨研究がわかる,pp49-57.羊土社,東京,2005
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. 1837:744-749, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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