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文献詳細

雑誌文献

生体の科学73巻6号

2022年12月発行

文献概要

特集 新組織学シリーズⅢ:血管とリンパ管 Ⅲ.血管・リンパ管と病態

Neurovascular unitと脳血管障害

著者: 髙橋愼一12

所属機関: 1埼玉医科大学国際医療センター脳神経内科・脳卒中内科 2慶應義塾大学医学部生理学教室

ページ範囲:P.559 - P.563

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 Neurovascular unit(NVU)とは,ニューロンと脳微小血管を基盤として脳機能を統合的に捉え,脳血管障害,特に虚血性脳卒中の病態を理解するために提唱されたconceptual frameworkである1,2)。NVUについて最初に記載されたのは2002年であり,今年でちょうど20年目になる3,4)。NVUの構成要素としてはニューロンと脳微小血管のほか,まず両者間を介在するアストロサイト(アストログリア),更にミクログリア,ペリサイト(周皮細胞),細胞外マトリックス(extracellular matrix;ECM)などが含まれる。オリジナルのNVUは“大脳皮質”の構造モデルであるが,“大脳白質”において神経軸索と髄鞘,すなわちオリゴデンドロサイト(オリゴデンドログリア)を加えたNVUを想定することは,疾患病態モデルとして有用である(図)。

 脳の機能維持に必須の酸素とグルコースは,脳外からのみ供給され,脳機能活動亢進に伴って増加する消費を補うため局所脳血流も増加する。供給されたグルコースは,毛細血管レベルのNVUにおける構成細胞間の代謝コンパートメントにより,ニューロンの効率良いATP産生を可能とする。脳微小血管(細動脈と毛細血管)の拡張には,ニューロンの直接作用,アストロサイトやペリサイトを介する作用が統合的に作動する。血管閉塞による脳虚血下では,一刻も早い組織再灌流が必要であり,再開通療法は現在の急性期脳梗塞治療の中核を成す5)。近年,NVUは脳血管障害のみならず,神経変性疾患,神経免疫疾患の病態を理解するツールとしても注目されている6,7)

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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